新橋駅周辺の清掃活動に、フミカさんと参加する。まだ朝の7時を回ったところである。
ごみをつかむトングとごみ袋を渡された私は、新橋界隈をさまよった。
新橋には、色々なものが落ちていた。空き缶やお菓子の袋など明らかなごみから、ドアのノブや電話の子機など、誰かが何かの事情であえて置いていったとしか思えないものも多かった。特に軍手の多さは異常だった。
「今日拾ったもので、店でも開けそう」と、軽口を叩きながら背中を伸ばす。
「それいいね」と、フミカさんはトングをカチカチならした。
さっそく清掃活動は中止となり、駅前広場にフリーマーケット会場が用意された。
「勝手にごみ拾いやめちゃっていいの」とフミカさんに聞いた視線の先では、清掃活動を取りまとめていた役所の担当者が、率先して会場設営に励んでいた。
「今日拾ったものを、今日売っていいの」と聞くと、フミカさんは隣に立つ警官に答えを委ね、警官は軽く首を傾げてから「いいんじゃないの」と、間延びした声で言った。
果たして、フリーマーケットは開かれた。
フミカさんは会場入り口の看板に、“取れ立て新鮮ゴミの市”ときれいな楷書体で記し、駅から出てきた人のほとんどが会場に吸い込まれていった。
拾ったものの中から商品の出品をせがまれた私は、軍手を即興で粗雑に縫い合わせて作ったショルダーバックと、空き缶と電話の子機を積み重ねて作ったトーテムポールを置いて、家路についた。
後日、フミカさんとお茶を飲みに待ち合わせると、軍手のショルダーバックを肩に下げて現れ、まだ飲んでもいないお茶を吹き出しそうになった。
フミカさんの話によれば、例の“ゴミの市”は毎月の恒例行事となり、空き缶のトーテムポールは新橋駅前の待ち合わせスポットとして人気であるとのことだった。
新橋には、しばらく近寄ることを控えようと思う。